もぐおのかばん

もぐおがいろいろ吐露します

危機がピンチで崖っぷち

 

思わぬことでピンチになった。

そんな話。

 

町の消防団に所属していた。

4月の第一日曜は出初式と言って、消防団の仕事始めの式典がある。

その日は、町中の消防団員が集まるのだった。

出初式といえば1月なのだがこの町では4月に行う恒例行事だった。

 

町の一番大きなグラウンドに何十台ものポンプ車が乗り付けられ、人がたくさん

集まってくるとちょっと緊張してくる。

町長や町会議員、県会議員が参加していて、後日町のケーブルテレビで放送された。

団員がいてその上に分団長そのまた上に師団長と役柄があるのだが、

上の人ほどめっちゃピリピリしていて少しゆがんで並んだだけで怒られた。

 

終わるまで一時間ほどかかるがトイレに行きたくなっても我慢。

大人になってから1時間以上も休めの状態(後ろ手で片方の手でもう片方の手首を

つかんで、両足を肩幅まで開いた状態)で立つことなんか学生の頃以来ないもの

と思うけどふつうに立たされていた。(貧血で毎年何人か倒れた)

 

式典には白い靴下と黒い靴が絶対厳守。

白い靴下はあったが黒い靴がない。

探してみると奥にいつ買ったか分からない、一足の黒い靴を発見した。

そこからがこれからの危機のはじまりだった。

 

そんなおごそかな式典で危機に陥ったのは始まってすぐ。

自分の分団のポンプ車を先頭に4列で並んで行進していた時、第一コーナーを

過ぎたあたりから両方の足元に違和感を感じた。

違和感はすぐに大きくなっていき足先がパカパカしてくるのが分かった。

 

「これは靴の裏のゴムがはがれとる!」

 

パカパカ感はグレードアップして、靴の底がブラブラ感へと変貌した。

 

「このままふつうに歩いたら靴の底が取れてどっかへ飛んで行ってしまう!!」

 

不幸にもケーブルテレビに写ってたりしたら町中の笑い者になってしまう。

思わぬ危機にこんな危険な靴を履いてきた自分を呪った。

 

たまらず足を上げるのをやめて、すり足で行進した。

下手なロボットのような不自然な歩き方。

「ズザーズザーズザーズザー....」と一人だけ音を立てて歩いている。

 

その後ろには、すり足で起こした砂煙。

 

「ズザーズザーズザーズザー....」町長らが座るテントの前もお構いなし。

 

所定の場所に着いたけど全員が並び終えるまでその場で足踏み....それは無理!

 

「ズザーズザーズザーズザー....」足踏みならぬ足すりでごまかす。

 

「ぜんたーい止まれ!」

その号令を聞いて足を止めてから、やっとピンチを乗り切ったことに安堵した。

 

式が終わってすぐに靴の裏のゴムを引っぺがした。

ペラペラになりスリッパの裏のようになった靴を見てふと気が付いた。

「よく見たらこれは弟の靴や....」

 

見た目はきれいな靴でも長い間放っておくと靴のパーツをくっけている接着剤が

劣化して靴の底のゴムが取れるという罠。質が悪いねん!

 

ほんま、こんなドッキリみたいなことが起こるとは、全然思てなかったわ。

これこそまさしく想定外というやつや....