もぐおのかばん

もぐおがいろいろ吐露します

それ、マスクちゃうで

目の検査のために、病院へ行った時の話。

 

コロナが流行していて、マスクをしていなければ

どこにも行けない。そんなに時期だった。

 

検査結果は、異常なしということで、ひとまず安心した。

そして会計を済ますため、呼ばれるまで待つことにした。

会計の窓口の真正面のソファーに座った。

会計の女性の声がよく聞こえた。

 

5分ほど、ぼーっとしていると60歳代くらいの男が会計の窓口に

やって来た。

会計の女性に、未払いのお金を払いに来た、と言っている。

 

その男に、何か違和感を感じた。

「マスク」だ!

男はマスクをしていなかった。

 

会計の女性もそのことに気付いて、男の言葉を遮り、

「マスクをかけてください」そう言った。

男はハッとした顔をした。

しかし、マスクをかけようとはしなかった。

「無ければそこの売店で買ってきてください。」

会計の女性はそう言うと左側の通路を手で指した。

男は、会計の女性を見たままこう言った。

「マスク、ある」

そう言うと、男は左手の手のひらで口をふさいだ。

「いや、それマスクちゃうで!」

ツッコミを入れずにはおられなかった(心の中で)。

 

目の前で繰り広げられる、男のアホな行為に

目が点になっていた。

会計の女性もマスクで表情はわからないが、目は険しかった。

あきれてしまったのか、これ以上注意してもムダと感じたのか

これ以上、会計の女性は何も言うのをやめた。

 

「2800円になります」

会計の女性は何事もなかったかのように淡々と対応した。

男は口を左手の手の平でおさえたまま、右手だけを使って財布から

千円札を3枚取り出した。

「200円のおつりと、領収書になります」

男は、右手でおつりと領収書をつかむと、そそくさと出ていった。

会計の女性が、そんな男の背にこう言った。

「お大事に」

 

「あんな人にでも、お大事にって言うたげるんや」

「しかし、なんで、マスクあるって言うたんやろう?」

そんなことを思いながら、また僕は、ぼーっとしていた。

 

男が割り込んできたせいで、待ち時間はかなり延びていた...