もぐおのかばん

もぐおがいろいろ吐露します

犬の散歩から帰れなくなる

毎日の日課で、夕方5時過ぎに犬の散歩に行ってる

いつものように山際を通る道を、Uターンして戻る途中、

それは現れた。

 

なにか、50メートルほど先に動くものが見えた。

フガフガと地面を嗅ぎながら、うろちょろとしている

イノシシだった。体長1メートルぐらいある。

イノシシ自体、この地域では別に珍しくはないが、

いざ、近くに出てくると危険を感じさせた。

「うわっ!ヤバイやん。帰れんがな。」

まるは全く無反応だった。道路に落ちた鳥のフンを嗅いでいた。

「イノシシが突進してきても、こいつは当てにならんな」

イノシシは帰り道をふさぐように、フガフガとずっとしている。

「まいったな…」

立ち止まったまま時間が過ぎていった。

 

道は片側は山、もう片側は川。

イノシシを避けてUターンして川を越えて山一つをぐるっと回って帰る

という手があるが1時間近くかかってしまう。

ここから普通に帰れば10分ほどで帰れる。

しんどい、あまりにもしんどい。

「あれっおらんようになった。」

突然イノシシの姿が見えなくなった。

だが、まだ安心して帰ることはできなかった。

道のそばに生えている草むらに隠れているかもしれなかった。

 

突如、向こうから自転車の男子高校生がやってきた。

いつも、挨拶してくれるええ子や。

「あかん!このままやったら、自転車の高校生が危ない!

イノシシにやられる!」

とっさに僕は、まると共に走り出した。

その時、悪魔のささやきが脳裏に聞こえた。

「自転車の高校生にイノシシがいた所を通らせて、

もう大丈夫か判断したらええがな。」

一瞬、迷ってしまった。

近づいてくる自転車の高校生。

この先に危険な野生動物が潜んでいることなど、

想像しているはずもなかった。

 

「そうや、同時にイノシシの前を通れば、どっちに向かっていいか

イノシシも迷うはずや!」

僕は、イノシシのいた場所で自転車の高校生とすれ違うように

タイミングを合わせてダッシュした!

「さいならー」

自転車の高校生がいつものように挨拶をしてすれ違う。

「さいならー」

僕は、イノシシが出てこないか、焦って走りながら挨拶を返した。

結局、イノシシは出てこなかった。

いつのまにか、どこかへ行ってしまっていた。

 

ゼエゼエと息を切らせて、立ち止まった。

イノシシがいた場所を振り向いて見たが、何もいなかった。

「無駄に疲れた…」

まるは思い切り走れてハアハアと興奮してしていた。

 

自転車の高校生、いつも挨拶してくれるのに、

イノシシの犠牲にしようと考えて、悪かった。

いきなり走り出して「怖っ」て思うたかもしれんが

ほんま、来てくれて助かったわ。