もぐおのかばん

もぐおがいろいろ吐露します

水害の二次被害やと思ったら、人的被害だった話 

 

 

住んでいる町が大雨で水没してもう14年前にもなる。

 

さすがに14年もたつとほぼ元通りになったように見える。

しかし元通りになるまでにいろんなことがあった。

 

特にたいへんやったのは水害が収まった後すぐ。

いきなりダンプやトラックの走る台数が増えて渋滞が増えた。

そして道路に残った泥が乾いて巻き上がって、喉の調子がおかしくなった。

 

町民グラウンドはゴミ置き場になって濡れて使えなくなった家財道具や

家電製品の山ができた。また、それを漁るヤツが出没した。

 

マンガ好きと言われたあの総理大臣も来た。何台も黒い車で連なって。

実はその車列とすれ違ったんですわ。それだけやけど.....

 

電気はすぐ復旧したけど、しばらく水は出なかった。

給水車が各地区を回るので、それをもらいに行った。

あの時の水のありがたさは、ほんま当事者じゃないとわからんのよ。

 

消防団は埋まった側溝の泥をかき出してまわった。8月やったから暑くてたまらん。

つらかったのが行方不明者の捜索。

竹の棒を一人一本渡され、それを持って川に入る。

各自捜索範囲を決めて、竹の棒を川底に刺しては進み、刺してはまた進み....と

感触を確かめながら捜していく。

早く見つけてあげたいけど、見つけたらどうしょう....とビクビクしていた。

 

 

そして一番忘れられないのが、近所の家のドロ出し作業。

そこで痛ましい事故が起きてしまった....

 

近所1件だけ家が濁流にのまれてしまったので、休みということもあって

(本当は近所という義理で)復旧作業の手伝いに行った。

家の裏の川から水が入ってきたようで、家の中は泥まみれの水草まみれだった。

どこから手を付けたらいいかわからなくて絶望的になりかけたけど、

近隣の高校からボランティアの女子生徒が来ていて、いっしょに畳を運んだりして

不謹慎やけど楽しかったです。

 

いったんお昼になって家に帰って休んでいると救急車のサイレンの音が聞こえた。

音は近くでやんだので、気になって作業していた現場まで急いで戻った。

 

行くと救急車が現場の家の前で止まっていて、周りは騒然としていた。

なぜかその家のおばちゃんが「わんわん」泣いていて、それを女子高生が

抱いて背中をポンポンしてなだめていた。

 

「なに?このカオスな状況....」

 

訳が分からず戸惑っていると、なにか橋の下で気配と声ががする。

覗いてみるとそこには、さっきまで作業していたおばちゃんのお兄さんが

頭から血を流して倒れていた。

まさに今、救急隊員が降りて救出しようとしていたところだった。

 

「復旧作業に来て事故に遭うって、もう二次被害やん....」

啞然となって絶句した....

 

事故の原因は、「家の前にかかる橋の手作りの欄干」だった。

元々その橋は欄干がなくて、人が落ちそうで危険な橋だった。

そこで橋の下から長い棒をたてて、その棒に直径10センチの塩ビのパイプを

くくりつけて欄干を作った。

そんな手作りの欄干とは知らず、おばちゃんのお兄さんは欄干にもたれかかり、

欄干は重さに耐えきれず壊れ、そのままおばちゃんのお兄さんは川底へ落ちた。

なんとか救急隊員に助けられ、おばちゃんのお兄さんは救急車で運ばれていった。

 

その後、気を取り直して作業を再開して、一輪車にドロを積んで運んだ。

しかし小型のパワーショベルを操縦していたおっちゃんがハッスルしすぎて、

キャタピラのベルトが外れて直せず、そのまま作業終了となった.....

なんやそれ!

 

 

今でも聞けば当時を思い出す音がある。

 

水害から一週間が過ぎた暑くてよく晴れた日。

まだ水道は復旧せず不便を強いられていた。

家の前で「キーンキーンキーン」と鉄を叩く音が聞こえた。

二階の窓から外を見ると、役場の水道局の人が道路の鉄製の蓋を開けて、

水道管を確認する姿があった。

 

あの鉄製の蓋は重い、しかも車がその上を通って固くなってなかなか開かない。

ハンマーで叩いて開けるその音がやけに響く。

やったことあるから分かる、地味にしんどいヤツや!

 

「キーンキーンキーン」

 

またハンマーで叩く音が響いた。

まるでその音は「水、もうちょっと待っといて」と言っているようだった。

 

ほどなくして水が再び蛇口から水が出るようになったけど、ほんま、その音を聞くと

あの時のなんというか「どないもこないも手も足も出ない」感じを思い出して

鬱っとなる。まあハンマーで叩く音などあまり耳にすることないが.....

 

 

 

橋から落ちたおっちゃんは入院したけど、何事もなくすぐ退院したで。

その原因の橋はその後、プロに頼んで鉄製の欄干に変わった。

まったく素人仕事は怪我の元やな.....