同居してた者の正体は...
知らないうちに、そいつは僕の部屋の屋根裏に入り込んだ。
そして、そいつはそのまま住み着いてしまった。
春が来て、そいつはいなくなった。
一目見ることもかなわなかったが、確かにそいつはいた。
その証拠として、そいつは「あるもの」を残していった...
気が付いたのは、ある冬の寒い夜のことだった。
テレビを見ていると何か引きずるような音がする。
「ズズッズズッズズッ」
何か頭の上の方で音がした。
「ネズミかな?」
いや違う。
ほうきで天井をつついてみた。
「ズズッズズッ」っ音が速くなった。
「うわぁーこれはヘビや!」
一気に怖気が全身を襲った。
すぐに天井からヘビが出てくるような隙間がないか確認した。
「良かった、ない!」
一応安心はしたが、木の板一枚向こうにヘビがいると思うといい気分はしなかった。
寝ようと明かりを消して横になっていると
「ズズッズズッズルズルッ」と動く音がした。
「ううっまだおる......もうおとなしく寝てくれ」
音の主に向かってつぶやいた。
ヘビの存在に気づいてから4ヶ月が過ぎた。
気温も暖かくなってきて、季節は春になった。
もうヘビのことは、あまり考えなくなっていた。
それからいつのまにか音もしなくなって、忘れてしまっていた。
ある日犬の散歩に行き、家の前まで戻ったその時
屋根の雨どいからピラピラと風に揺らめく、ひものようなものに気づいた。
近づいて上を眺める。
そこにあったのは、ヘビの脱け殻だった。
「うわっマムシの抜け殻やん!」
1メートルほどの長さで、まさしくヘビ柄の抜け殻が風に揺れていた。
それは、ヘビが「出ていきました」と報告しているようだった。
「やっと出て行ってくれたか...」
感慨深く抜け殻を見つめていた。
ヘビの皮には金運が良くなるご利益があるんだったな。
普通は財布に入れとくんやけど、家の屋根につるしとってもご利益があるかな?
長い間住んどったんやから、恩返しぐらいしてもバチは当たらんで。
と思った時点でご利益もなくなってしまうか...