もぐおのかばん

もぐおがいろいろ吐露します

ブタカバンの中身

今週のお題「カバンの中身」

 

高校生時代、僕のクラスはあまり勉強に熱心なヤツがいなかった。

教科書やノートは常に机の中に置きっぱなし。

そもそも、明日の授業の予習や、今日覚えたことの復習を

するという概念が無い。

教科書やノートをカバンに入れて持って帰ることは、

無駄なことと考えているヤツばかりだった。

カバンは薄ければ薄いほどイケてると思ってた時代だったので、

カバンの中は空っぽだった。

 

同じクラスに山川君(仮名)がいた。

山川君のカバンはいつもパンパンに膨れ上がっていた。

毎日、教科書とノートを家に持って帰っていた。

それでカバンがパンパンに膨れ上がっていたのだった。

「毎日、ちゃんと持って帰って真面目やなー」

と思って、僕はそのカバンを「ブタカバン」と心の中で呼んで

バカにしていた。

 

ある日山川君に聞いてみた。

「毎日、教科書とか持って帰ったら重たいやろ?」

すると山川君は

「重たいけど、なくなったら困るから持って帰るんや」

「そんなもん取らんやろ」と一瞬思ったが、

勝手に借りていくヤツはおらんとも限らんかった。

「そうやな...頭ええな!」

僕はその時、目から鱗が落ちたようだった。

 

その日から、僕も教科書とノートを持って帰ることにした。

カバンの中に机の中の教科書とノートを全部入れた。

そこには「ブタカバン」とバカにしてきた山川君のカバンと

同じものがあった...

 

山川君は家から駅まで自転車で二十分、そこから電車で一時間、

そして駅から学校まで十五分かけて通学している。

僕は、家から学校まで自転車で三十分の距離を通学していた。

教科書とノートで膨れた自分のカバンを自転車の荷台に積んだ。

「重たいけど帰るか」

自転車にまたがり、足に力を入れて何とか進んでいく。

いつも余裕で登る坂道を、自転車を降りて押して歩いてしまった。

「こんな重たいカバン、毎日よく持ってくるな、スゲーわ」

 

やっぱり、全部持って帰るのはやめた。

次の日に使わないものだけを持って帰ることにした。

「勝手に持っていかれるかもしれん」という不安はあるけど、

その時はその時として、忘れることにした。

 

もう、山川君のカバンをブタカバンとバカにするのはやめた...